パソカラホーダイオススメ 絢香特集！

今そこにある必然。過去でも未来でもなく今そこにあるべくしてあるモノ。すでに映画「ラストラブ」の主題歌としても話題となっている絢香のニューシングル『Jewelry day』は、そんな歌だ。人をその瞬間その瞬間に目の前で起きた事態や誰かの想いに気付けるほど、優秀ではない。多くを見逃し、ときには大切なモノを手放したりもする。でも必ずいつか気付くのである。あらゆるモノの意味に。あの日、差し伸べられていた愛や優しさに。そして、暗闇と思えた過去に光は注ぐ。その光は今、大きな力となり、未来を結ぶ。そんな有意義な話を絢香から聞いていた。
──今回の新曲『Jewelry day』、最初はふたつのアコースティックギターの音色だけで、本当にそっとそっと少しずつ音数が増えていって、絢香さんもそっとそっと話し掛けるように歌い綴っていく。これをシングルで挑戦するというのは、相当な自信とアクティブさがないと出来ないと思うんですが、自身ではどう思われますか？

絢香：確かに今までのシングルとは違うというか、新しい面を出した曲なんですよ。歌い方ひとつにしても、これまでは大きな気持ちで真っ直ぐ歌う曲が多かったんですけど、今回は自分の内側に問いかけるように歌ってるんです。すごく柔らかい世界観なんですけど、でもパッと蓋を開けてみると、すごく近くに感じられる曲というか。タイトルが『Jewelry day』で、キラキラした宝石のような日々という意味を込めてるんですけど、誰にでも歩いてきた道は必ずあって、その中にはすごくツラかったりとか悲しかったりした出来事もあって、それをまだ振り返れないときってあるじゃないですか。どうしても思い出すのがツライ。でも少し経ってふと振り返ったときに、当時は気付かなかったけど、そこで初めて気付く愛とか優しさとかがあったりする。

──うんうん。

絢香：私も、ファーストアルバムをリリースして、デビューして一年経って、二年目に入ったからこそ、今回この曲を出せたんじゃないかなって思うんです。曲自体はもう一年ぐらい前にあったんですよ。歌詞の世界観も自分の中にはあったんですけど、「どうまとめたらいいかな？」っていうのがあって、ゆっくりゆっくり書いてて今に至ったんですよ。で、映画「ラストラブ」の主題歌の話をいただいたんです。世界観がピッタリだったので。

歌詞の初めに「broken my heart」って、結末があってのスタートなんですよね、この曲は。そしてその結末に至るまでの物語を振り返っている曲なんですけど、なんかそういう時間ってふとしたときにあったりして。そこで気付いたこととか、それによって前に進めたりとか、その時間がなければ今も絶対にないし、その先も絶対にないし、全部が繋がってるんですよね。例えば私だったら、『三日月』で歌っていた、故郷・大阪を離れる寂しさとかツラさ。そういったモノを歌っていた時期の自分も今振り返ると、すごくキラキラしている。それは今だから思える。だから今も未来から見たときに“Jewelry day”だと思えたら素敵だなと。そういう想いでこの曲は書きました。

──そんな想いがふと湧き上がってきたのは、なぜなんでしょうね？

絢香：この曲のストーリーには、男女の恋愛が綴られているんですけど、でも私に当てはめて言えば、デビューしてから一年半、いろんなことがあった中で、全然後ろなんて振り返る余裕がない日々だったんですよね。でも一年半経って、ふと振り返れる瞬間があったんです。そこには、いろんな出逢いがあって、改めて音楽の楽しさを知ったり、ライブをやる中で根本的に大事なことに気付いたりしながら歩んできた日々があって。歌が好きで、しっかり想いをもって伝えることができれば大丈夫なのに余計なことを考えてしまった時期もありましたし。でもそうやってひとつひとつ大事なことに気付いていく中で、やっとふと振り返れる程度の余裕が持てたんだと思います。だからこそ、この曲を出すタイミングは今なんじゃないかと思ったんです。

──そのちょっとした余裕を持てたせいか、デビュー当時に比べてすごくやわらかくなった印象を今日は受けています。

絢香：あの、不安とか焦りとか、ないときはないんですよ、絶対に。不安があってあたりまえだと思ってるし。その不安がまた自分を掻き立てたりもするんで。でもやっぱりデビュー当時って、何も見えないし、何もしたことがなかったから、やっぱりすごく不安で、当然焦りもすごくあったし。まだスタッフとの付き合いも時間が浅かったりするから、どう接すればいいのか？とか。そういうのもあったりするから、とにかく焦っていたんですよね。今ももちろんあるんですけど、今はいろんなことを見てこれたからこそ、選択肢が広がったし、きっとだいぶ余裕が持てたんだと思います。

──だから今回の『Jewelry day』もすごくあたたかい雰囲気になったり？

絢香：そうですね。だから本当に今の自分がすごく出てるんじゃないかなって、思いますね。

──その『Jewelry day』を聴いて感じたことでもあるんですけど、絢香さんの音楽ってその歌声にフォーカスが当たることが多いと思うんですが、ひとつひとつの楽曲のメロディ展開とアレンジに関しても、大袈裟に言うと命掛けてますよね？

絢香：本当にそうです。曲作るのもすごく細かいところまで実は詰めたりとかしていて。メロディのひとつひとつの行き場所とか、譜割りとか、そこからの展開とか、差別化とか、もう全部を何回も録っては、聴いては、「やっぱりここはこうした方がいい」ってやり直して。で、アレンジにしても、とりあえずやってみて全部通して聴いたときに自然と感じるモノだったり、『Jewelry day』に関しても、元々あったアレンジはギター一本ではなかったんですけど、やっぱりデモで録ったときのギター一本の感じがすごく伝わるモノだったんで、「もう思い切ってギター一本にしちゃったらいいんじゃないですか？」っていうところから始まってるんですよ。そこから、映画を見終えたときのような余韻をこの曲でも表現したかったので、ストリングスをわりと長いサイズで録ったりして。シンプルだけどちゃんと展開があるアレンジにしましたね。

──だから絢香さんの音楽って、実はすごく難易度が高いことをやっているんだけど、決してそれを聴き手に難しい音楽だと感じさせないというか。

絢香：曲にしてもそうなんですけど、「音楽をやってる人から見たらすごくカッコイイけど、でもたくさんの人に届けようとする楽曲としてはどうだろう？」とか、そういうのはすごく自分たちの中で戦うところだったりもするんですよ。「本当はこっちの方がカッコイイけど！」とかね。でもどっちを取るか？っていうのは、そのときによっても全然違うし、曲によっても変わってくる。

──ただ『Jewelry day』は、そういった点で言ってもすごく納得のいったモノが出来た感じなんじゃないですか？

絢香：そうですね。それこそ、本当に誰にでもある気持ちだったりするので。スーッとみんなの心に届けばなと思います。

──そんな『Jewelry day』、この曲も一人でも多くの人に愛されることを願っていると思うんですが、やっぱり今はデビュー当時に比べて、更に「伝えたい」「届けたい」といった想いが強くなっていますか？

絢香：そうですね。そこが一番の、自分にとっての歌う意味だったりするんですよね。それってやっぱり音楽活動を続けていく中でどんどん強くなっていく。自分の心の中から出てきた言葉とかが全然知らない人の心の中にまでも残ったりするのは、やっぱり凄いことだし、そういうことをひとつひとつイメージする度に「やっぱり伝えるってことは大事だ」と思いますね。あと、最初は、自分の隣の人、家族とか、そういったすごく近い存在があって。そこからどんどんどんどん広がっていって今があるので、最初の頃の気持ちを忘れずに歌っていきたいです。

──絢香さんが音楽を通して何かを伝えていく先に、どんなことがあってほしいですか？

絢香：人によって曲や詞の受け取り方は絶対違うと思うんですけど、ふと何かプラスの要素というか、時間が掛かっても、光みたいなモノが届けられたらいいですね。それが一番。音楽って凄く素晴らしいモノだと思うし、自分自身の力にもなるモノなので、そういう形で届けばなと思います。

Interviewer：平賀哲雄

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